ネィティブ・スピーカに学ぶのが最善?その2

この記事は「ネィティブ・スピーカに学ぶのが最善?その1」の続きである。ちなみに、MSN Spacesから、Windows Live Spacesへの移行にともなう混乱が収まってからはじめての投稿になる。


理由3: ネイティブ・スピーカは必ずしもあなたの母語や既に慣れ親しんでいる言語の知識を活用できない。

誰であれ、新たな言語を学ぶ際には、母語を含んで既に親しんでいる言語に引きずられる。しかしこれは必ずしも悪いことではなく、うまく活用することもできる。

例えば、日本語が母語であれば、韓国語は比較的学びやすい(逆も真)。文法構造が似通っているし、双方とも中国語から多くの語彙を取り入れたために、似通った語彙が多いからだ。韓国語の標準的な挨拶表現の「안녕하십니까(アンニョンハシムニカ)」は、NHKの韓国語・朝鮮語番組のタイトルに使われたり、「韓流」ブームのおかげで、今や多くの日本人の知るところとなった。だが、この「안녕(アンニョン)」が、実は「安寧(あんねい)」だと知れば、ずっと記憶しやすいだろう。そう、明治憲法の条文にも現われた、「安寧秩序」の「安寧」である。

同様に、英語に堪能であれば、フランス語は比較的学びやすい。ラテン語由来のロマンス語群(フランス語、イタリア語、スペイン語、など)間ほどの言語発祥由来による近さはないものの、日本語に比べれば、フランス語の文法は英語のそれにずっと近い。しかも、歴史的経緯から、フランス語の語彙が大量に英語に取り込まれている。

したがって、既に英語に通じているのであれば、英語でフランス語を学ぶ方が、日本語で学ぶのより効率がよいし、日本語が母語なら、英語で韓国語を学ぶのは極めて非効率的だいうことだ。

言語習得に限らず、何かをまとまった量の知識を習得するときに一般的に言えることだが、効率の点からは、既にある知識を利用しない手はない。それと常時、比較・参照することで、新しい知識を獲得するのも容易になる。違いが小さいときに、特にその効果が顕著になる。しかし、ネイティブスピーカは、あなたの母語や、あなたが既に習得している他の言語についての知識があるとは限らない。母語を外国人に教授するための訓練を受けた、例えばESL教師のような人たちでもそうだ。これは決定的な欠点ではないものの、特に大量の知識を詰め込まなくてはならない初学者の段階で言語習得の効率に大きな差を生みかねない。

明治大学教授マーク・ピーターセンは、日本人向けに、「日本人の英語」に代表される、優れた英語の解説書を何冊も著している。彼の著作が我々日本人にとって非常に有益なのは、彼が日本語に精通しているからだ。だから、我々に理解できるような説明ができる。(ちなみに、彼は「ワシントン大学大学院で近代日本文学を専攻」したのだそうだが、この「ワシントン大学」がUniversity of Washingtonのことならば、それはここシアトルにある。)

しかも、母語、あるいは既知言語の利用方法は、上にあげたような、言語の発生事情や歴史的経緯に依存した、いわば正統な方法に限らない。語呂合わせのような、いわばその場限りの一発もののようなものも、これもまた立派な習得ツールだ。その有用性は決して馬鹿にできない。

以前ここで、「『ゆうびんきょく』」という記事を書いた。これは日本語を勉強しているアメリカ人が、「郵便局」という単語を覚えるために考えついた語呂合わせの話。その語呂合わせが実に秀逸で、我々にとっては面白い話だが、真摯に日本語を勉強している人にとっては、それ以上に、記憶の助けとしての価値が高いだろう。日本人がアメリカ人に日本語を教えているとして、こういった語呂合わせも合わせて教えられるのは、その日本人が英語にもある程度通じている場合だけだろう。

私はかつて複数の日本の英会話学校で教えていたが、ECCなどでは、こういった観点から、初学者は日本人が教える、というポリシーを貫いていた。「ともかくネィティブ・スピーカに教わるのが一番」式の風潮が強い中、あえて商売勘定に流されず、そういった理念を堅持しているのは立派だと思った。ちなみに、教師のトレーニングに最も時間をかけたのもECC。

念のため再度強調するが、この理由3は決定的欠点ではない。ネイティブ・スピーカであっても、あなたの母語に通じた人はいるだろうし、ネイティブ・スピーカとは別に、日本人にも習うという形で補えるからだ。

まだしつこく続く。

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